マーケティングを学んでいると「ニーズ」という言葉、よく耳にしますよね。でも実は、このニーズには2つの種類があることをご存知でしょうか?それが「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」です。

「お客様のニーズに応える」とよく言われますが、表面的なニーズだけに目を向けていると、せっかくの良い商品も売れなくなってしまうんです。なぜなら、お客様が本当に求めているものは、その奥深くに隠れていることが多いから。

この記事では、顕在ニーズと潜在ニーズの違いをわかりやすく解説し、なぜこの2つを理解しないとビジネスがうまくいかないのか、そして潜在ニーズを引き出す具体的な方法までお伝えします。マーケティング初心者の方も、中小企業の経営者の方も、マーケティング担当者の方も、ぜひ最後までお読みください。

記事を読み終えるころには、お客様の本当の悩みが見えてきて、商品やサービスの売り方が変わるはずです。

顕在ニーズと潜在ニーズの基本を理解しよう

まずは、顕在ニーズと潜在ニーズがそれぞれ何なのか、基本をしっかり押さえていきましょう。

顕在ニーズとは?

顕在ニーズとは、お客様自身がはっきりと自覚している欲求のことです。「〇〇が欲しい」「〇〇したい」と明確になっている状態で、お客様は自分が何を求めているかを説明できます。

たとえば、「空気清浄機が欲しい」「安いタスク管理ツールを探している」「ダイエットして10kg痩せたい」といったものが顕在ニーズにあたります。お客様は自分の課題を理解していて、それを解決する手段を意識的に探しています。

顕在ニーズを持っているお客様は、購買行動に移る距離が近いという特徴があります。すでに欲しいものがわかっているので、商品を見つけたら比較検討して購入する可能性も高いです。ただし、顕在ニーズを持つお客様の数は、実は市場全体で見ると意外と少ないようです。

潜在ニーズとは?

一方、潜在ニーズとは、お客様自身もまだ気づいていない、心の奥底に隠れている欲求のことです。何かしら欲求はあるものの、それが何なのか明確に理解できていない、意識できていない状態を指します。

潜在ニーズを説明するのに、氷山の例えがよく使われます。顕在ニーズは水面から顔を出している部分で、誰の目にも見えています。でも潜在ニーズは水面下に隠れている部分。そして実は、この水面下の部分のほうがはるかに大きな体積を占めています。

具体例で考えてみましょう。「空気清浄機が欲しい」というのは顕在ニーズですが、その裏には「快適な睡眠がとりたい」「アレルギーを気にせず生活したい」「年中、アレルギーの影響を受けない環境が欲しい」といった潜在ニーズが隠れています。また、「タスク管理ツールを探している」という顕在ニーズの奥には、「チーム全体の生産性を上げたい」「残業を減らして働き方を改善したい」「プロジェクトの進捗を可視化して不安を解消したい」という潜在ニーズがあるかもしれません。

お客様自身が自覚していないため、潜在ニーズを理解するのは簡単ではありません。でも、この潜在ニーズをキャッチできれば、いわゆる「かゆいところに手が届く」商品やサービスの提案につながります。

なぜ潜在ニーズを見逃すと商品が売れないのか?

ここからが重要なポイントです。なぜ潜在ニーズを理解しないと、せっかくの良い商品も売れなくなってしまうのでしょうか?3つの理由を見ていきましょう。

理由その1|顧客の本当の悩みを捉えられない

顕在ニーズだけに応えていても、それは表面的な解決にしかなりません。お客様が本当に求めているのは、もっと深いところにある問題の解決なんです。

たとえば、花粉症で困っているお客様が「空気清浄機が欲しい」と言ったとき、単に高性能な空気清浄機を提案するだけでは不十分かもしれません。もしかしたらそのお客様は、「夜ぐっすり眠りたい」「朝起きたときに鼻がスッキリしていたい」という潜在ニーズを抱えているかもしれないからです。

この潜在ニーズを見逃してしまうと、お客様は商品を購入しても完全には満足できず、「思ったほど効果がなかった」と感じてしまう可能性があります。結果として顧客満足度が低下し、リピート購入や口コミでの紹介にもつながりにくくなってしまうんですね。

理由その2|競合との差別化ができない

顕在ニーズへの対応は、実は競合他社も当然行っています。「空気清浄機が欲しい」というお客様に対して、どの会社も性能や価格で勝負しようとします。これでは価格競争に巻き込まれるだけで、自社の強みを活かした差別化が難しくなります。

しかし、潜在ニーズまで掘り下げて理解できれば、話は変わってきます。「快適な睡眠がとりたい」という潜在ニーズがわかれば、空気清浄機だけでなく、寝室の湿度管理や空気の循環、さらには睡眠の質を高めるトータルソリューションを提案できます。これは競合がまだ気づいていない、あなただけの提案になる可能性があるんです。

潜在ニーズを満たす提案ができれば、お客様から「この人は私のことをよくわかってくれている」「この会社なら信頼できる」と思ってもらえます。これこそが、価格ではない本当の差別化なんですね。

理由その3|ビジネスチャンスを逃してしまう

先ほどの氷山の例えを思い出してください。顕在ニーズは水面上の小さな部分、潜在ニーズは水面下の大きな部分でした。つまり、顕在ニーズを持つお客様は市場全体のほんの一部で、潜在ニーズを持つお客様のほうが圧倒的に多いんです。

顕在ニーズにだけ目を向けていると、「空気清浄機が欲しい」と明確に思っている人にしかアプローチできません。でも潜在ニーズに気づけば、「なんとなく寝つきが悪い」「朝起きるのがつらい」と感じている、もっと多くの潜在的なお客様にアプローチできるようになります。

この潜在層へのアプローチができないということは、市場の大部分を見逃しているということ。つまり、大きなビジネスチャンスを逃しているんです。潜在ニーズを掘り起こすことで、新しい商品開発のヒントが得られたり、まだ誰も進出していない新しい市場を見つけたりできる可能性もあります。

潜在ニーズを引き出す3つの方法

「潜在ニーズが大切なのはわかったけど、どうやって見つければいいの?」そんな疑問をお持ちの方も多いはず。ここでは、お客様の潜在ニーズを引き出す具体的な方法を3つご紹介します。

「なぜ?」を繰り返す質問法

最もシンプルで効果的なのが、「なぜ?」を繰り返す質問法です。お客様が最初に言う要望は、実は「ウォンツ(欲しいもの)」であることがほとんど。そこから「なぜそれが欲しいのか?」を3〜5回ほど掘り下げていくことで、本当のニーズが見えてきます。

具体例を見てみましょう。ある女性社員が「電動自転車が欲しい」と言ったとします。ここから質問を重ねていきます。

「なぜ電動自転車が欲しいんですか?」
「通勤を楽にしたいからです」
「なぜ通勤を楽にしたいんですか?」
「疲れないで会社に着きたいからです」
「なぜ疲れないで会社に着きたいんですか?」
「朝から元気に仕事がしたいし、帰りも余裕を持って過ごしたいからです」
「なぜ朝から元気に過ごしたいんですか?」
「実は最近、同僚に元気がないと言われて…もっと生き生きしていたいんです。魅力的でいたいというか…」

こうして掘り下げていくと、最初の「電動自転車が欲しい」という表面的なウォンツの奥に、「魅力的でいたい」「モテたい」という潜在ニーズが隠れていることがわかります。これがわかれば、電動自転車以外にも、ジムのトレーニングや美容サービス、ファッションコンサルティングなど、もっと幅広い解決策を提案できるようになりますよね。

ポイントは、質問を繰り返すときに詰問口調にならないこと。あくまでお客様の話に興味を持って、自然な会話の流れで掘り下げていくことが大切です。

顧客インタビューやアンケート調査

直接対話を通じて、お客様の感情や体験を深く理解する方法も効果的です。顧客インタビューでは、お客様が商品やサービスを使っているときの気持ち、困っていること、理想の状態などを詳しく聞き出していきます。

インタビューを実施する際のポイントは、オープンな質問を心がけること。「はい」「いいえ」で答えられる質問ではなく、「どのように感じましたか?」「その時どう思いましたか?」といった、お客様が自由に語れる質問をすることで、思いもよらない潜在ニーズが見えてくることがあります。

また、多くのお客様の潜在ニーズを分析したい場合は、アンケート調査も有効です。ただし、選択式だけでなく自由回答形式の質問を設けることが重要。お客様の生の声を集めることで、データからは見えてこない本音や感情を知ることができます。

データ分析と行動観察

お客様の購買履歴や行動パターンを分析することも、潜在ニーズを発見する強力な手段です。どんな商品を選んでいるのか、どんな時間帯に購入しているのか、どんなページを長く見ているのかなど、お客様の行動を観察することで、言葉では語られない潜在ニーズが見えてくることがあります。

たとえば、ある飲食チェーンが顧客の来店履歴を分析したところ、平日の午後3時頃に来店する特定の顧客層がいることがわかりました。さらに調査すると、その時間帯は子育て中のお母さんたちが、子どもの習い事の送迎の合間にホッと一息つきたいという潜在ニーズを持っていることが判明。そこで、その時間帯限定のリラックスメニューを提供したところ、来店頻度が増えて売上も向上したそうです。

データ分析の良いところは、お客様自身も気づいていない行動パターンを客観的に把握できること。ただし、データだけに頼るのではなく、そこから見えた傾向について実際にお客様に確認することも大切です。

まとめ

ここまで、顕在ニーズと潜在ニーズの違い、そして潜在ニーズを見逃すと商品が売れなくなる理由についてお伝えしてきました。最後に要点をまとめておきましょう。
顕在ニーズは、お客様自身が自覚している明確な欲求。一方、潜在ニーズは、お客様自身も気づいていない心の奥底にある欲求です。氷山に例えると、顕在ニーズは水面上の小さな部分で、潜在ニーズは水面下の大きな部分。つまり、潜在ニーズのほうが市場としてはるかに大きいんです。

潜在ニーズを見逃してしまうと、お客様の本当の悩みを捉えられず顧客満足度が低下します。また、競合との差別化もできず価格競争に巻き込まれてしまいます。そして何より、市場の大部分を占める潜在層にアプローチできず、大きなビジネスチャンスを逃してしまうことになります。

潜在ニーズを引き出すには、「なぜ?」を繰り返す質問法、顧客インタビューやアンケート調査、そしてデータ分析と行動観察という3つの方法が効果的です。これらを組み合わせることで、お客様の本当のニーズが見えてきます。

顕在ニーズと潜在ニーズの両方を理解することで、お客様が本当に求めているものを先回りして提供できるようになります。その結果、顧客満足度が向上し、競合との差別化ができ、新しい市場を開拓するチャンスも生まれます。せっかくの良い商品を、もっと多くのお客様に届けるために、まずはお客様の話をじっくり聞いて、その奥にある本当のニーズを探ってみてください。

「自社のマーケティング戦略で顕在ニーズと潜在ニーズをどう活用すればいいかわからない」「お客様の本当のニーズを引き出す方法を具体的に知りたい」そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひ無料相談をご活用ください。あなたのビジネスに合わせた具体的なアドバイスをさせていただきます。

あなたの商品やサービスが、もっと多くのお客様に届きますように。まずは一歩、踏み出してみませんか?

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